業務改善として何から始めるべきか、どんな効果が得られるのかがわからず、実行することに悩む経営者も多いのではないでしょうか?
業務改善とは、生産性の向上や会社経営の安定につながる業務効率化のひとつです。業務改善を行うことで、仕事環境をより良くすることができ、従業員の労働環境改善にも役立ちます。業務改善を検討し始めたらはじめに「業務の可視化」から取り組みましょう。
この記事では、業務改善と業務改革の違い、メリット、8つの施策アイデアを詳しく解説していきます。
業務改善とは?業務改革との違い
業務改善と業務改革はよく混同されてしまいますが、目的が大きく異なるものです。業務効率化を図る目的をまずは明確にした上で、自社にとって業務改善が必要なのか、業務改革が必要なのかを検討してみましょう。
はじめに業務改善と業務改革について解説します。
業務改善とは
業務改善とは、会社内で問題視されている作業や業務の内容をフローで把握し、分析することで業務の見直しを行う業務効率化のひとつです。業務改善の目的は、業務効率化や不要な作業を減らすことで従業員の負担軽減を行うものです。
業務工程の見直し、課題の洗い出し、施策の検討と実行を繰り返し行うことで、業務効率化を推進し、生産性の向上を図ります。
また、業務改善では業務の一部分にスポットを当てて施策を検討できるので、業務改善が数日で完了するケースも少なくないです。
業務改革との違い
一方、業務改革は業務本来の目的を達成するために、業務の一部あるいは全体を再構築していきます。業務改革は業務改善と違い、「従業員の労働環境改善」ではなく、業務の効率化や生産性の向上を目的として実行するものです。
業務改革は、Business Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の頭文字をとって「BPR」とも呼ばれます。
業務改革については、下記の記事で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
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業務改善の効果とメリット
業務改善を行うことで得られる主なメリットには、下記の5つが挙げられます。
- 業務の効率化
- 従業員の満足度アップ
- コスト削減
- 人手不足の解消
- 業務フローを社内全体で把握できる
業務改善では、はじめに現状の作業内容を把握することから始めるため、現場と経営者との作業に対する認識のズレを減らすことが可能です。
業務改善を図る上で、現場の業務実態を正しく理解するのは欠かせません。
業務の効率化を図る際に失敗しやすいのが、現場との認識の相違です。経営者目線ではなく、業務の担当者の細かなフローをデータで蓄積し分析することで、上記のようなメリットを得ることができます。
成功に導く!業務改善の6つのステップ
ここまで、業務改善と業務改革の違いについて解説してきました。業務改善を実施する前に、全体の流れを把握しておくことが重要です。
業務改善は下記の6つのステップで行いましょう。
- 目的設定
- 現状の可視化
- 課題の分析
- 業務改善の施策を計画
- 計画した施策を実行
- 効果測定
ここからは、業務改善の6ステップについて解説していきます。
1.目的設定
業務改善を行う前には改善の目的を明確にし、設定することが大切です。目的の設定をせずに業務改善を実施すると、従業員の負担を増やしかねませんので、安易に進めてはいけません。
また、前述したように、業務改善の目的によっては、業務改善よりも業務改革(BPR)が適切な場合もありますので、注意しましょう。
業務改善を行う具体的な目的例として、ムリ・ムダ・ムラの「3M」をなくすことが挙げられます。
- ムリ:高すぎるノルマ設定や難しいスケジュールによって、従業員の能力を越えた負荷が発生している状態
- ムダ:能力を大きく下回っている業務によって、余計な動作や作業が発生している状態
- ムラ:上記の「ムリ・ムダ」が混在することで、時期によって仕事の効率化が大きく変動する状態
2.現状の可視化
次に、現状の業務を可視化しましょう。業務の可視化にはすべての業務を把握し、見える化しなくてはならないため、担当部署や担当者へのヒアリングを行うのも有効な手段です。
可視化する上で確認する項目には、主に下記の3つが挙げられます。
- 各部署が何の業務を担当しているのか
- 業務連携のコストや部署間の関係性
- イレギュラー発生時の業務内容
3.課題の分析
1つの課題に対してさらに課題を項目ごとに細分化し、分析していきましょう。課題の分析とは、改善方法を検討するだけではありません。
課題を細分化する際は、担当者・発生頻度・原因についても検討してみてください。
4.業務改善の施策を計画
業務改善の施策を計画する際に重要なのが「実行の優先順位」を決めておくことです。改善すべき課題は1つとは限りませんので、施策の実行する順番を検討する必要があります。
優先順位を決めるポイントは、業務改善の難易度・業務改善の効果の2つの観点から判断します。最初は「改善難易度がやさしく、効果が大きい課題」から着手し始めましょう。
また計画の段階で、誰が何の業務に対してどのように取り組むのかを明確にしておくことも重要です。5W2Hを意識すると計画の手順がイメージしやすくなります。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
- How Much(いくらで)
5.計画した施策を実行
業務改善計画が立てられたら、いよいよ施策の実行です。施策の実行には現場担当者である従業員全員の協力が必要不可欠です。実行する前に、あらかじめ業務改善の目的と課題、方法について共有しておきましょう。
従業員一人ひとりが、自分がどのように改善をしていくのかが明確にわかっている状態で実行していくことが大切です。
6.効果測定
計画した施策の実行後は、必ず効果測定を行います。課題に対して施策がどの程度の効果があったのかを評価しましょう。
業務改善は、長期的な視点で行うものです。PDCAサイクルを回すのは、業務内容の洗い出しから担当者への確認、改善に有効なツールの検討・導入しながら進めていくため、時間がかかります。
業務改善は短期間で効果を求めずに、課題の根本的な解決を図ることが重要です。
業務改善の8つの施策アイデア
業務改善の施策は、大きく以下に分類され全部で8つの施策が挙げられます。
- 業務の廃止
- 業務の自動化:システムの導入、システムの連携、RPA
- 業務の変更:BPR
- 業務のアウトソース:人材育成、人材増員、アウトソーシング
1.業務廃止
業務改革を始めるなら、まずは業務の廃止から検討しましょう。業務廃止は、「ムダ」を省く上で非常に有効な手段です。さらにコストがかからないので最も取り組みやすい施策といえます。
例えば、毎月帳票を作る作業は作成後に活用されていなければ廃止できるもののひとつです。他にも、重複している作業は廃止すると良いです。
業務が必要か否かを判断するためには、最初の業務の可視化が欠かせません。現状の業務をまずは洗い出してから、業務廃止に取り組んでみましょう。
2.システム導入|パッケージソフト・ツールの導入
業務改善の有効な手段として、「システムの導入」が挙げられます。既存のシステムやツールを導入することで、業務改善や効率化を図ることが可能です。
既存システム・ツールは主に下記の10個に分類されます。
- グループウェア:Google Workspace・Microsoft 365など
- ERP(Enterprise Resources Planning):SAPといった基幹系情報システム
- SFA(Sales Force Automation):Salesforce・Hubspotなどの営業支援システム
- MA(Marketing Automation):マーケロボ、SATORIなどマーケティング領域業務の自動化ができる
- 会計ソフト:Money Forwardクラウド会計ソフト・freee・弥生会計オンラインなど
- 給与計算ソフト:ジョブカン給与計算・マネーフォワード クラウド給与など
- 勤怠管理システム::jinjer勤怠・ジョブカン勤怠管理など
- 在庫管理ソフト:ロジクラ・ZAICOなど
- 人事労務ソフト:SmartHR・クラウドハウス労務など
- 生産管理システム:アラジンオフィス・Oracle NetSuiteなど
業務改善システム・ツールは業務効率化や自動化に欠かせませんが、種類が多くどれを導入すべきか悩むケースも多いです。業務改善システム・ツールについては、下記の記事で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
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3.システム導入|スクラッチ開発
スクラッチ開発とは既存のシステムを使わず、完全オーダーメイドのシステムを開発することです。スクラッチ開発の対義語をパッケージ開発といいます。
スクラッチ開発であれば、必要な機能を備えたシステムを導入することが可能です。
- 自社独自のサービスに向けて使用したい場合
- パッケージを独自にカスタマイズしたい場合
4.BPR(業務改革)
BPR(Business Process Re-engineering)とは、業務改革のことで業務本来の目的を達成するために行います。既存の業務プロセスを一部もしくは全体的に再構築する抜本的改革のことです。
BPR(業務改革)は主に以下の3つの手段が挙げられます。
- 手順の変更
- 業務の集約
- 分業
4-1.手順の変更
手順の変更とは、業務のやり方を変更する方法です。 業務の中で無駄な部分や効率化できる部分がないかを検討し、変えていきます。
4-2.業務の集約
業務の集約とは、同じ業務を担当者1人に集約させ、 作業を行うことで効率化を図ることです。具体的な方法としては、請求金額の確認や請求書の作成に関する担当者を作る方法が挙げられます。
4-3.分業
業務の集約の反対の方法として、1人で行うと非効率な作業もあります。業務の分散も方法として検討してみましょう。例えば、日程調整ツールを用いて全員が各々入力することで、1人に対する業務負担を軽減することが期待できます。
企業の置かれるビジネス環境は目まぐるしく変化しています。ITやAIの普及、破壊的イノベーションへの対応など、ビジネス環境が変化することでビジネス課題の高度化・複雑化を感じている経営者も多いでしょう。 業務改革(BPR)とは、業務プロセ[…]
5.システム連携
システム連携には「API連携」と「iPaaS」の2種類が挙げられます。
API連携
API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアやプログラム、Webサービスのをつなぐインターフェースのことです。
また、「API連携」とはAPIを通して機能を連携し、 業務自動化を実現を図るため、自らのソフトウェア に他のソフトウェアの機能を埋め込むことである。
iPaaS
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、複数のシステムを連携して業務の自動化を実現するサービスのことです。
管理先がバラバラになっているデータをひとつに統合し、システム間の連携を円滑にする際に役立ちます。
6.RPAの導入
RPA(Robotic Process Automation)とは、人間の代わりにロボット(プログラム)が業務を引き受け、一連の作業を自動化するソフトウェアのことです。
RPAを活用すれば、下記のような定型業務を自動化することができます。
- 帳簿入力
- 伝票作成
- 広告レポート作成
- 商品データの更新
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7.人材の育成
業務改善を進める上で、社員一人ひとりの知識やスキルアップは非常に重要です。知識やスキル習得ができれば、処理能力が上がり仕事の作業スピードが向上します。
例えば、スキルアップを目的としたパソコン操作の研修を開催するのも方法のひとつです。
8.増員・アウトソーシング
人員不足が業務の圧迫につながるケースも少なくありません。この場合であれば、新規採用で増員したりアウトソーシングを活用したりするなども、業務の効率化を図る手法のひとつです。
なお、アウトソーシングを活用すれば、コストの削減だけでなく、業務に精通した人材を組織に採用することができます。
業務改善を成功させるただ1つのポイント
業務改善を成功させるには、「業務の可視化」が必ず必要です。現状を正しく把握できないままでは、最適な施策を検討することは難しいでしょう。
業務改善を検討している方へ向けて、最後に業務を可視化する3つの手法をご紹介します。課題の洗い出しに悩んでいる、すでに業務改善を進めているがうまくいかないという場合は、ぜひ下記の方法を試してみてください。
業務を可視化する3つの手法
業務を可視化する方法には、下記の3つが挙げられます。現状の業務を正確に把握するためには作業の見える化は欠かせません。
- 業務棚卸表を作成
- プロセスマイニングツールの活用
- 工数管理ツールを使用
それぞれの手法について、詳しく見ていきましょう。
1.業務棚卸表を作成
1つ目は、業務の棚卸しを行い表にまとめる方法です。業務の棚卸表を作成することで、業務全体が見えるようになります。
業務を棚卸するときの例として、下記の項目が挙げられます。
- 担当部署
- 部署ごとの業務
- 担当者
- 作業内容
- 業務の発生頻度
- 工数・作業時間
2.プロセスマイニングツールの活用
2つ目がプロセスマイニングツールの活用です。
業務棚卸表では手作業で、業務内容や工数や作業時間を確認しなくてはなりません。しかし、プロセスマイニングツールを活用すれば、業務プロセスに関わるデータを蓄積し、ログとして分析することができます。
例えば、SAPやSalesforceといった固有のイベントログ、マウスの操作ログといった端末のデータを収集することが可能です。
プロセスマイニングとは、業務のプロセスを可視化・分析し業務課題の解決に役立てることができるツールのひとつです。業務改善に悩みを抱えている経営者は多くいますが、課題の可視化ができずに、何から改善を測れば良いのかを悩むケースも少なくありませ[…]
3.工数管理ツールを使用
3つ目には、工数管理ツールの使用が挙げられます。
工数管理ツールは、業務に要した時間や作業量、必要な人員を把握し管理できるシステムです。工数の観点から業務改善を図ると、従業員の適切な人数の配置、工数の見直しなどに役立てられるでしょう。
他にも、工数に応じて請求額を決める場合であれば、工数管理ツールの活用で見積もりの精度を高めることにも期待できます。
自社の状況に合わせて最適な手法を選択しよう
今回は、業務改善を検討している・すでに進めているけれどうまくいかないと悩む方に向けて、業務改善と業務改革の違いやメリット、フローや具体的な施策アイデアを紹介してきました。
何から始めれば良いかわからない場合には、はじめに改善を行う目的を明確にした上で、現状の課題を洗い出すことから始めましょう。
業務を改善するには、目的と課題にあった施策を行わなくてはなりません。ぜひ、下記の資料を手元の保存版として活用しながら、自社にぴったりな手法を実行してみてください。
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