Business Model:構想立案
「構想立案」のフェーズでは、特定した課題に対する施策を考えていきます。要するに、課題を解決するために実行すべき具体策を考えていくフェーズです。
施策を考え出していく方法はいくつか存在しますが、書籍内では「競合他社の取り組み」をヒントとする方法が紹介されています。
- 競合他社のニュースリリースや中期経営計画の発表内容など公開されている情報をヒントとする
- 直接他社に赴いてヒアリングを実施する
ただし、他社情報はあくまで参考程度とし、実際にどういった施策を実行していくべきかはプロジェクトのコアメンバーで話し合って決めていく必要があります。他社の情報をヒントにしつつ、自社の抱えている課題と照らし合わせながら、具体策を考えていきましょう。
「構想立案」のフェーズも通常1ヵ月~3ヵ月程度の時間を要します。
Decision:投資判断
プロジェクトの立ち上げ期における最後の関門が、会社からの投資決裁を獲得するフェーズです。ここでは次の4つを実行していきます。
- マスタスケジュール確定
- リスク分析
- 費用対効果分析
- 実施判断(投資決裁)
「投資判断」のフェーズで特に注意すべき事項として、3.費用対効果分析を挙げておきます。この費用対効果分析を詳細に実施していないと、最悪の場合決裁が取れず、プロジェクトを開始できません。
費用対効果分析について、書籍内では次のように解説されています。
人はパンのみで生きるにあらず。同じように、プロジェクトも金勘定だけでやるものではない。
だが、ビジネスである以上は、「プロジェクトのお金の流れはどうなるのか」のシミュレーションは必要だし、もっとベタに言うと「それをやって儲かるのか?」という質問には答えなければならない。その答えを提供するのが、費用対効果分析である。
引用:『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』第4章:計画の価値を示し、Goサインをもらう 223ページ
投資決裁を頂くためのプレゼンでは、「プロジェクトを実施すればこのくらいの売上upにつながります。」ということを、数字と論理で示すことが重要です。プレゼンで「売上upにつながる仕組み」を論理的に示すために、費用対効果分析では想定できるメリットと数字を考え、グラフ等に落とし込んでいきます。いくつか例を示します。
- 業務改革によって見込まれるコストの削減額を概算で算出しグラフ化する
- 効率化によって生まれる余裕時間から、追加開発に回せる工数を算出する
- 余裕時間から生まれた工数で開発可能なソリューションの規模を、過去事例を参考に例として提示する
分析の結果、どうしても投資回収が成り立たないのであれば、プロジェクトを諦めることも選択肢の一つです。撤退をプロジェクトの開始前に決定できることも、立ち上げ期にDecisionフェーズをしっかり実行しておくメリットになっています。
まとめ:『業務改革の教科書』を片手に改革をスタート
『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』には、変革プロジェクトの立ち上げ期を4つのフェーズに分け、それぞれのフェーズで実施すべき事柄を詳説しています。
- Concept Framing:コンセプト固め
- Assessment:現状調査・分析
- Business Model:構想立案
- Decision:投資判断
これは著者のコンサルタントとしての経験から「うまくいっていない変革プロジェクトの9割は立ち上げ期にやるべきことをきちんとやっていない」ことが明確であるためです。
本書には実際に著者のコンサルティングを受けたお客様の生の声が多く引用されています。変革プロジェクトがいかに困難なものであるのかが言葉の端々から滲み出ていますが、そういったプロジェクトを成功に導いた著者が書いているからこそ、本書で紹介されているノウハウには説得力があります。
業務改革担当として社内の業務改善、DX化を任されている方々にとって、『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』はプロジェクトの道標になってくれるでしょう。
現場の「生の声」が詰まった270ページを参考に、業務改革をスタートしてみてはいかがでしょうか。