『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』は変革プロジェクトの道標となる一冊|書評レビュー

業務改革を始めるにあたり、まずは何から着手していくべきなのでしょうか。現状の業務フローの洗い出し?業務改革の方針決め?チームメンバーの選定?

いきなり業務改革を始めようとしても、どういった順番で何から着手していくのがセオリーなのかが分からない方も多いと思います。

『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』には、現役コンサルタントが著した業務改革のノウハウがぎっしり詰まっています。本書にはなんと参考文献は無く、実際に改革を行なってきたお客様の生の声と実経験を基に書かれているとのことです。

本記事では、本書の全体像を図示しつつ、業務改革プロジェクトの立ち上げ期で重要となるポイントをおさらいしていきます。

業務改革の教科書著者紹介

白川 克(しらかわ・まさる)さんについて

白川 克(しらかわ・まさる)
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(株)バイスプレジデント

一橋大学経済学部卒。コンサルティングにおいて「空気を読まず、お客様にとって本当に正しいと思うことを言い、お客様とともに汗をかいて実行しきること」をモットーとしている。

榊巻 亮(さかまき・りょう)さんについて

榊巻 亮(さかまき・りょう)
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(株)代表取締役社長

大学卒業後に大手建築会社へ入社。業務改善活動に携わり、改革をやり遂げる大変さを痛感する。ケンブリッジ入社後は「現場を変えられるコンサルタント」を目指し、2021年6月16日より同社の代表取締役社長に就任。

変革プロジェクトの成否は立ち上げで9割決まる

業務改革を始めるにあたって最も重要なフェーズが「立ち上げ」です。「立ち上げ」とは、業務改革の実施を決めた直後~業務改革プロジェクトの計画が完成し、会社からのGOサインが出るまでのフェーズを指します。

『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』では、立ち上げのフェーズを下表のように4つに分類し、それぞれのフェーズにおいて何をすべきかとその理由が説明されています。

画像参考:『業務改革の教科書』図表B-1 プロジェクトを立ち上げるノーマルなステップ

立ち上げが最も重要な理由は「うまくいっていない変革プロジェクトの9割は立ち上げ期にやるべきことをきちんとやっていない」ためです。

立ち上げ期の重要性が分かる事例として、筆者の体験事例をひとつご紹介しましょう。

とある企業にて、「DXソリューションを導入する」という題目のみでシステム導入を行なったプロジェクトがありました。

DXソリューションを導入する目的や目指す姿がお客様の中で固まりきっておらず、システム会社側も適切な提案ができていなかったのです。結局、ステークホルダー全体でコンセプトについて合意できていない状態のままスタートしました。コンセプトが固まっていないまま設計フェーズに入ったため、仕様変更が多発し、納期を守るためには稼働を上げざるを得ず、ラスト2か月間は残業のオンパレード状態で何とかプロジェクトを収めました。

(事例は本記事筆者より)

上記は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入することで、世間から先進的な企業であるとアピールすることが目的となり、システムを導入して何を実現したいのかが後回しになったままスタートしてしまった事例です。

※DX(デジタルトランスフォーメーション)=組織が提供するサービスや、業務そのもの、組織、業務プロセスなど既存のやり方・枠組みについてデータやデジタル技術などの先端技術を駆使することで変革していこうとする取り組み。(捉え方によって諸説あります)

最初にDXのコンセプトについて合意を取っていれば、仕様変更も最小化でき、余計な工数を削減できたでしょう。業務改革の目的やコンセプトをステークホルダー全体でしっかり合意し、プロジェクトの計画を練った上で実行に移すことが非常に重要であることは、あらゆる業務に共通するものです。

書籍内には次のような記述があります。

「大半の変革プロジェクトが失敗する」と聞いたことはないだろうか。

例えばIT関係のプロジェクトで言えば、プロジェクト成功率は31%でしかない。(『日経コンピュータ』調べ。)

システム構築とは無関係の業務改革や、システム構築までたどり着かずにうやむやになる変革を統計に入れると、もっとずっと低い成功率になるだろう。

大成功した変革をリードしたある方が、プロジェクトを振り返ってこう言っていた。

「変革プロジェクトの成功は90%、立ち上げで決まる。実行局面では社外に優秀な方がたくさんいて、力を借りられる。でも、やりたいことがこちらで見えていなかったり、途中でぶれたら、プロジェクトは必ずうまくいかない」

本当におっしゃる通りだと思う。

引用:『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』プロローグ 2ページ

本書はその成功を左右する立ち上げ期に重点をおいており、全270ページ中約260ページが立ち上げ期においてやるべきことについて詳説されています。つまり、本書の内容を理解して有効活用することで、90%成功する業務改革をスタートさせることができるのです。

プロジェクトの立ち上げ期における4つのフェーズ

『業務改革の教科書』では、立ち上げのフェーズを下記の4つに分けていると説明しました。

  • Concept Framing:コンセプト固め
  • Assessment:現状調査・分析
  • Business Model:構想立案
  • Decision:投資判断

ここからは立ち上げの4つのフェーズにおいて重要となるポイントに触れていきます。