今注目のDXとは?IT化・デジタル化との違い|ビジネスにおける事例をわかりやすく解説

  • 2022年5月20日
  • 2022年5月23日
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DX推進における日本企業の現状と課題を解説

年間約12兆円の経済損失が予想される「2025年の崖」でご紹介した2025年の崖が目前に迫る中、日本のDXは海外と比較して遅れています。ここからはDX推進における日本企業の現状と課題を見ていきましょう。

【現状】日本企業の8割が抱えるレガシーシステムによってDX推進が遅れている

レガシーシステムとは、古くなった技術や仕組みで構築されているシステムのことです。経済産業省のDXレポートによると、約8割の企業が老朽化したシステムを抱えているという調査結果が報告されています。

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(簡易版)」

レガシーシステムは仕組みが古いだけでなく、長年にわたって機能追加、規模の拡大が行われたことで、システム全体がブラックボックス化(ドキュメントなどが整備されておらず、属人的な運用・保守状態にあること)している場合があります。ブラックボックス化したレガシーシステムはシステムを使っているユーザー側企業だけでなく、システムの構築と運用保守を担当しているベンダー企業であっても、システム内部を完全に把握することは不可能になってしまうのです。

また、システムが肥大化している場合はすぐに新しいシステムへ移行することが難しく、現状を維持するための保守費用も莫大なものとなっています。レガシーシステムは日本企業のDX化を阻む大きな要因のひとつといえます。

【課題】レガシーシステムから脱却できない3つの理由

様々な影響を与えているレガシーシステムですが、日本企業がレガシーシステムから脱却できない理由は大きく次の3つが挙げられます。

  1. ベンダー企業にエンジニアが集中し、ユーザー側にノウハウが蓄積されない
  2. 有識者の退職等によるノウハウの喪失
  3. 業務に合わせたスクラッチ開発多用によるブラックボックス化

ベンダー企業にエンジニアが集中し、ユーザー側にノウハウが蓄積されない

日本はシステムを利用するユーザー企業よりも、システムを構築し提供するベンダー企業にITエンジニアの多くが所属しています。


米国のITエンジニアは6割がユーザー企業のIT部門に所属している一方で、日本のITエンジニアは7割がベンダー企業に所属している状態なのです。

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(簡易版)」

ベンダー企業がシステムを一手に担当しているため、ユーザー側にはシステムのノウハウが蓄積されません。自社のシステムについて理解している人材が不足していることからベンダー任せになっているのは、ブラックボックス化したレガシーシステムから脱却できない大きな原因のひとつとなっています。

また、日本のSI(システムインテグレーション:ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークを組み合わせてシステムを構築すること)産業は多重下請け構造なため、システムに載せるソフトウェアの開発や現場の実作業は下請け企業が担当することも多いです。この場合、ベンダー企業であっても元請けにノウハウが蓄積されず、下請けのエンジニアしかソフトウェアの詳細な動作内容を知らないという状況が発生します。

有識者の退職等によるノウハウの喪失

特にレガシーシステムでは、大規模なシステム開発を行ってきたエンジニアの定年退職により、有識者に蓄積されたノウハウが失われたことでブラックボックス化が進行しています。

ベンダー企業も引継ぎ等は行っていますが、レガシーシステムで使われている枯れた技術に精通した人材はある程度年齢を重ねている場合が多く、今後、引き継いだ人材のリタイアも続いていきます。

業務に合わせたスクラッチ開発多用によるブラックボックス化

スクラッチ開発とは、パッケージなどを利用せず一からオリジナルのシステムを開発することです。業務に合わせた独自のシステム構築が可能ですが、汎用的なパッケージとは異なりシステムの仕様等が全てオリジナルであるため、システムの担当者しか仕様を把握していない事態が起こり得ます。

日本にはスクラッチ開発や汎用パッケージでもカスタマイズを好むユーザー企業が多いようです。個々のシステムに独自ノウハウが存在する状態になっており、何らかの理由でこれが消失したときにブラックボックス化してしまうケースがあるのです。

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(簡易版)」

国内企業におけるDX推進の事例

日本企業がDXを推進すべき理由と、それでもDXがなかなか進まない原因について見てきました。ここからはそんな状況の中でもDXを推進している事例を、ベンダー側とユーザー側からひとつずつご紹介します。

【ベンダー側】日立製作所のDX推進事例

日立製作所(以下、日立と表記)は経済産業省と東京証券取引所が共同で選定している「DX銘柄2021」でグランプリ(最上位)として選定されています。日立が他社と比較して優れている点は、自社内の約1000以上のDX成功事例を集約し、ノウハウを全社で共有することで「次々にDX成功事例を生み出すサイクルが確立されている」点です。

日立の『大みか事業所』という工場では、AIやアナリティクス、IoTを活用しながら工場の最適なオペレーションを実現することで、製品の発注から納品までにかかる時間を50%短縮する効果があったとのことです。

日立では『大みか事業所』のような成功事例を最適化ソリューションとしてコンテナ化(アプリケーションや設定ファイルをひとまとめにすること)し、全社で共有しています。

参考:株式会社日立システムズ「【第2回】「DX銘柄2021」グランプリ選定の日立製作所、DXへの取り組みが評価された理由とは?」

参考:metichannel「【DX銘柄2021】DXグランプリ企業取組紹介 株式会社日立製作所 執行役会長兼執行役社長兼CEO 東原敏昭」

【ユーザー側】国土交通省のDX推進事例

国土交通省(以下、国交省と表記)におけるDX推進の事例としては次の2つをご紹介します。いずれの事例も今までの業務プロセスを根本から覆し、業界全体の生産性と安全性向上を目指す取り組みであり、国を代表するDX推進の事例といえるでしょう。

  • 道路交通センサスにおける調査員を廃止しAI解析による調査へ切り替え
  • ローカル5Gによる建機遠隔操作やVR技術を活用したインフラDX推進研修の実施

道路交通センサスにおける調査員を廃止しAI解析による調査へ切り替え

『道路交通センサス』とは、日本全国の道路と道路交通の実態調査のことで、昭和3年から約5年に1回実施されています。国交省はこの『道路交通センサス』にAI技術を取り入れることで交通量観測を自動化し、今までの調査方法を抜本的に改革しているのです。

従来の調査方法としては、調査員が手元のカウンターでカチカチと測る「人手観測」が主体でした。国交省は人手観測に代わる新たな調査方法として、道路の監視カメラ映像から車両を自動認識する画像認識型AIによる観測システムを取り入れています。

交通量観測が自動化すると調査員が不要となるだけでなく、道路を平常時、災害時問わず常に観測することが可能となります。今までの5年に1回の調査では平常時のみ観測可能でしたが、災害時の交通量観測、交通データ収集が可能となることで、フェーズフリーな道路設備構築に繋げることができるのです。

参考:一般社団法人日本自動車会議所「国交省、道路交通センサス 25年までに「常時観測」」
参考:国土交通省「道路交通センサスのデータ収集の現状と課題」
参考:京都新聞「道路交通量の調査員廃止 国交省、AI解析でコスト削減」

ローカル5Gを活用したインフラDX推進研修の実施

土木工事や現地調査業務など、現場作業の多いインフラ業界をターゲットとして、国交省は『ローカル5G』や『VR』などの通信技術、デジタル技術の活用による「インフラ業務のリモート化」を目指した技術研究を推進しています。

『ローカル5G』とは、通信キャリア各社が一般向けに提供している5G通信網ではなく、企業や自治体等が占有でき、ニーズに合わせた環境構築を可能とするものです。国交省ではローカル5G通信環境を整備した「建設DX実験フィールド」という実証実験所を構築し、20tの油圧式ショベルを遠隔操作室から操作する実験が行なわれています。

これらの技術が実証実験や研修用教材の枠を超えて、実際の現場作業プロセスに適用できるレベルになってくると、施工前の現場調査や計画、施工作業等も基本的にリモートで行なうことが可能になります。

参考:富士通株式会社「5G/ローカル5G」

参考:国土交通省「インフラDX 本格始動!~インフラDX ルーム・建設DX 実験フィールド開所式の開催~」

まとめ:DXによる変革のためにまずは日々の業務効率化から

DXとは、「デジタル技術を取り入れることで、今までのビジネスモデルを根本から変革すること」という意味を持ちます。

経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」を皮切りに日本でもDXが注目を集めていますが、日本のDX推進を阻む大きな要因として「レガシーシステムから脱却できない」という課題があります。

様々な課題が立ちはだかる状況の中でDXを推進していくには、IT化・デジタル化のステップを踏んで、現場レベルで現状からの変化を進めていくことが非常に重要だと思います。まずは貴方の日々の業務において無駄な作業が無いか、効率化できる手法が無いかを探してみるのはいかがでしょうか。

この記事を読んだ方の変革の意思が大きな変革の流れを呼び、日本のDX推進が成功することを願っています。

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