【事例あり】働き方改革の取り組みと実施するメリット3つを解説

2019年に施行された働き方改革によって、多くの企業が多様な働き方の選択肢を取り入れるようになりました。新型コロナウイルス感染症が流行したことも影響し、働き方を大幅に変革した企業が増えたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

今回は、中小企業・大企業が行なった働き方改革の事例をご紹介します。また、働き方改革が必要とされている背景や導入するメリットなども解説していきます。長期的なビジネス展開をかなえるために、働き方改革を取り入れて多様なワークスタイルを実現していきましょう。

働き方改革とは|「一億総活躍社会」に向けた取り組み

働き方改革とは、労働者のライフスタイルの多様化に伴い、一人ひとりが労働スタイルを選択できる社会を実現するための施策です。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立などに代表される労働者ニーズの多様化などの課題を乗り越えるために、2019年4月1日から大企業をはじめとして施行されました。

働き方改革で重要視される考え方は、以下の3つです。

  • 長時間労働の是正
  • 正規・非正規間の格差解消
  • 多様で柔軟な働き方の実現

人生の幸福度や将来設計は、労働環境や働き方によって変わるものです。働き方改革では、労働者が多様なワークスタイルを選択できる社会を実現することで、私たち一人ひとりがより良い将来の展望を持てる状態を目指しています。

参考:厚生労働省「『働き方改革』の実現に向けて」

【取り組み別】働き方改革に成功した中小企業・大企業のユニークな事例9選

ここでは、働き方改革に成功した中小企業・大企業のユニークな事例を9例ご紹介します。ビジネス領域やDX技術の取り入れ方にも着目しながら、自社の働き方改革の方針を決定するための指標にしていきましょう。

長時間労働の是正をした事例

まずは、働き方改革の中でも長時間労働の是正をした事例をご紹介します。日本では長時間労働や過剰なストレスによる健康被害が深刻な社会問題となっています。従業員の心身のケアに尽力することで、生産性を上げ経済的なコストも抑えられるでしょう。

事例1.トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、従業員の多様な働き方の制度化を推進するための改革を行なっています。在宅勤務制度や年次有給休暇取得促進の取り組みなどを通し、多様なライフスタイルに対応するための制度を整えました。

特に仕事・育児・介護の両立支援に向けた柔軟な勤務時間制度の施策では、子どもの年齢や学年に応じた勤務時間短縮制度も設けられ、性差なく従業員が活躍できる環境が構築されています。

参考:働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)「トヨタ自動車株式会社」

事例2.株式会社スープストックトーキョー

株式会社スープストックトーキョーの働き方改革では、育児や介護の場合に限らず、誰でも時短勤務制度が活用できる制度を取り入れました。オリジナル制度である「生活価値拡充休暇」を提唱し、季節休暇を倍増させ年間120日の休日取得を就業規則に定めました。

現場の人手不足への対応は、店長経験者らで編成された「拡充隊」を充て、労働力が不足しやすい首都圏の店舗を中心に支援に入れる仕組みを構築。副業や兼業を認める制度も制定し、意欲が高い社員を後押しする環境を整えています。

参考:CASE STUDY(厚生労働省)「株式会社スープストックトーキョー」

事例3.株式会社ZOZO

株式会社ZOZOでは、部門ごとに在宅勤務制度を設けて従業員のライフスタイルに寄り添っています。中でも特徴的な制度が、従業員の家族のサポートが必要な場合に1日最大2時間の時短利用が可能な「家族時短制度」です。

育児や介護だけではなく、ペットや同居人など「従業員が家族と認識する人や動物」のサポートが必要な際にも利用できます。学業と業務の両立を叶えるために学費を支援する「社会人ドクター制度」も、ZOZOならではの制度といえるでしょう。

参考:ZOZO.com「ZOZOWORKSTYLE 働き方・福利厚生・制度」

柔軟な働き方を実現した事例

次に、柔軟な働き方を実現した事例をご紹介します。性別・年齢・キャリア・国籍などにかかわらず、あらゆる従業員のライフスタイルに沿った働き方を提案できることは、働き方改革そのもののビジョンでもあるのです。

事例4.ソフトバンク株式会社の取り組み

ソフトバンク株式会社では、多様な働き方を実現するためにスーパーフレックスタイム制の全社導入を行ないました。2017年4月からコアタイムを撤廃し、従業員が業務の状況に応じて始業・終業時刻を変更できるような環境を構築しています。

各個人やチームが最も効率的に働ける時間帯に業務を行なうことで、企業全体の生産性と成果を向上させることが目的です。他にも定時退社DAYやプレミアムフライデーなど、従業員のライフワークバランスを整えるための施策が展開されています。

参考:Softbank「Softbank流働き方改革」

事例5.株式会社ファーストリテイリングの取り組み

株式会社ファーストリテイリングでは、店舗はシフト制・本部はフレックス制度を導入し、ライフスタイルに合わせた働き方を実現しています。従業員がフレキシブルに勤務時間を調整するために、在宅勤務制度も取り入れました。

すべての施策は、あらゆる従業員がライフステージに合わせた働き方を選択し、キャリアを形成できることをビジョンとしています。流動的に変化する社会やトレンドに合わせ、現在もさまざまな人事制度の改革を実施中です。

参考:FAST RETAILING「WORK STYLE」

事例6.アステラス製薬

アステラス製薬では、スーパーフレックス制度や在宅勤務制度のほかにも、サテライトオフィスを設置して通勤時間の削減を可能にしました。サテライトオフィスは、他部門との情報・人材交流を通じた創造性の発揮も目的としています。

家族との時間や自己啓発に充てるために、毎週金曜日は「FFデー」として終業時刻を繰り上げる試みも行なっています。また健康管理時間の実績や裁量労働の運量状態を定期的に確認しつつ、従業員の心身の健康や心理的安全性を確保する動きを取り入れていることも特徴です。

参考:働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)「アステラス製薬株式会社」

高齢者の就労促進をした事例

ここでは、高齢者の就労促進をした事例をご紹介します。2022年の出生数が80万人を下回った日本において、中長期的に労働力を確保することは多くの企業にとって急務といえるでしょう。

企業が生き残るためには若年層だけではなく、高齢者を対象にした就業の施策も重要です。

事例7.ソニー株式会社

ソニー株式会社では「キャリアプラス」や「Re-Creationファンド」などの施策を導入し、ベテラン・シニア社員の新しいキャリアへの挑戦を促しています。キャリアプラスは社内の兼業を認める制度で、個人のキャリアをより柔軟に構築するために役立っています。

Re-Creationファンドは、50歳以降の社員が次のキャリアを築くためのサポートプログラムです。保有スキルの向上や新しいスキル獲得のために自己投資をする場合、上限10万円までの費用を会社が補助します。

参考:RECTUIT「シニアのキャリア形成もチャレンジングに ソニーの『Career Canvas Program』」

事例8.株式会社髙島屋

株式会社髙島屋では、60歳で定年を迎えた際に希望者を再雇用する「再雇用制度」を導入しました。対象は定年時に退職手続きを行ない、退職金を支払った従業員です。

原則60歳までの働き方は継承しつつ、個々の意欲や職務遂行力に応じて再雇用後のコースが設定されており、高齢者の働きがいや目標感、達成感を高められます。

参考:内閣府「髙島屋の再雇用制度について」

事例9.医療法人社団永生会

医療法人社団永生会では「定年退職者再雇用規定」を作り、規定を満たしていて再雇用を希望する看護師を65歳まで継続雇用する制度を展開中です。

看護職の分野は労働の負荷が大きいことを踏まえ、高齢者本人の体力を加味しつつ、介護施設や療養病棟のような比較的労働負荷が低い分野に優先して配属されます。

参考:厚生労働省「ベテランナースの豊富な経験とノウハウを活かせる第 3 の就業形態の導入 」

働き方改革を実施する3つのメリット

ここでは、働き方改革を実施するメリットを3つご紹介します。働き方改革は、現在の日本が抱えている少子高齢化・ストレス社会・労働者の多様化などの課題を乗り越えるための施策です。

働き方改革を前向きに取り入れることは、流動的に変化し続ける社会を生き抜くための企業力につながっていくでしょう。

1.生産性の向上

働き方改革では、企業や個人の生産性の向上が期待できます。なぜなら、労働時間の短縮により集中力が向上したり、柔軟な働き方によりライフワークバランスが保たれ、業務へのモチベーションが向上したりすることが見込まれるからです。

また働き方改革では、デジタル化をはじめとした新規技術導入による生産性向上も目的とされています。

2.企業ブランディングの向上

働き方改革を行なうことで、企業のケイパビリティや社会的イメージを向上させることが可能です。魅力的な労働環境は優秀な人材を集めるための土壌となり、従業員の満足度が上がることで企業のポジティブなイメージも広がります。

また従業員のライフスタイルやキャリアプランを守ることは、企業が請け負う社会的責任の実践として評価されるでしょう。

3.離職率の低下

働き方改革が行なわれている企業では、仕事とプライベートが両立しやすい傾向にあるため離職率の低下が期待できます。

労働環境が改善されるほど企業への帰属意識や愛社精神が高まり、仕事の自由度が高まるほど自己実現の機会が増加します。その結果、業務への情熱につながっていくでしょう。

働き方改革に関する取り組みの5つの具体例

ここでは、働き方改革に関する取り組みの具体例をご紹介します。まずは事業の領域や従業員の規模などと照らし合わせながら、部分的に取り組みをスタートさせていきましょう。

1.在宅勤務・テレワークの導入

多くの企業が導入している働き方改革の手法のひとつが、在宅勤務・テレワークの導入です。自分に合った環境で仕事ができるため、ストレスが減少し生産性の向上が期待できます。

ただし従業員によっては、テレワークによって精神的負担が増えたり、健康管理が困難になったりする可能性も。オフィス勤務とテレワーク勤務を選択できる環境の構築が理想的だといえるでしょう。

2.育児休暇の取得促進

子育て世帯に寄り添った施策は、多様なライフスタイルを受け入れる働き方改革の基本です。日本では育児休暇の取得を義務づけている法律がありますが、従業員自身が心理的安全性を確保した上で取得できる環境が重要です。

たとえば男性の育児休暇取得を奨励する制度や、子育て支援の充実などを導入することをおすすめします。また休暇中の従業員をサポートするためのバディ制度を設けることで、さらに休暇を申請しやすい環境が整うでしょう。

3.短時間勤務の認可

働き方改革では、短時間勤務を定着させることで従業員満足度が上がり、ライフワークバランスをとりやすくなります。働き方改革における短時間勤務の手法は、フレックスタイム制度・リモートワーク・在宅勤務・パートタイム制度が代表的です。

働き方改革の目的は、従業員が自分で働き方を選択できる社会の構築です。柔軟な選択肢を提供することで従業員のモチベーションが向上し、生産力アップにもつながるでしょう。

4.フレックスタイム制度の導入

働き方改革に用いられやすいフレックスタイム制度導入について、さらに詳しくご紹介します。フレックスタイム制度は、出社時間帯を自由に選択できる働き方です。

労働時間が制限されていないため、従業員が自分のスケジュールや家族との時間に合わせて労働時間を調整できます。

フレックスタイム制度では仕事とプライベートのバランスをとりやすくなり、ストレスや負担を軽減できます。個々の能力を最大限に発揮できる働き方が可能になるだけではなく、離職率の低下も期待できるでしょう。

5.賃金引き上げ

働き方改革における賃金引き上げは、慎重に行なうべき施策であるとともに、従業員のモチベーションや生産性を大きく向上させる可能性を秘めています。賃金引き上げでは評価制度を見直し、個々の能力や成果を正当に評価するための仕組みをつくることが大切です。

賃金が上がると従業員の定着率が高まり、人材確保にもつながります。また賃金が適正であることは企業の社会的信頼性にも影響を与え、イメージアップも図れるでしょう。

企業が働き方改革を実現する4つの方法

ここでは、企業が働き方改革を実現するために取り入れたい方法を4つご紹介します。

働き方改革の基本は、従業員が多様な働き方を選択できる環境を整えることです。ライフワークバランスの改善を柱としながら、成功例を模索しつつ施策を打っていきましょう。

1.勤怠管理を最適化する

働き方改革を実現するためには、従業員の勤怠管理を最適化することが求められます。たとえばオンライン勤怠管理システムやフレックスタイム制を導入することで、従業員の自己管理能力を高めつつライフワークバランスを改善できるでしょう。

2.個人の意識改革を行なう

働き方改革では、従業員一人ひとりが個人でできる働き方の改善に取り組むことが大切です。たとえば「時間内に自分の作業を終わらせる」という意識を徹底することで、長時間労働や時間外労働にかかわる働き方改革が促進されます。

働き方改革は従業員の多様性を守り引き出す施策であると同時に、従業員一人ひとりの協力を必要とするものです。ただし、企業や業務に対する高い意識を持ってもらうためにも、まずは労働環境から改善することが求められます。

3.アウトソースを活用する

企業によっては、少人数の従業員がコア業務だけではなく事務的な作業も行なっています。1人あたりの従業員が担う仕事量が多いときは、アウトソースを活用することも視野に入れましょう。

特に誰が行なっても成果に差が出にくい業務は、アウトソースの活用に適しています。

4.業務効率化ツールを導入する

働き方改革では、MAツールやRPAツールなどの業務効率化ツールを導入することをおすすめします。労働環境のデジタル化は業務の負担を大きく軽減し、テレワークやサテライトオフィスを導入するための足がかりにもなるでしょう。

働き方改革の実現に必要な新たなリソースを確保するためにも、ITツールの活用は必須といえます。

働き方を導入して、従業員満足度・企業力・離職率の改善を目指そう

今回は、働き方改革の意味や背景、企業の導入例、働き方改革を導入する際のポイントなどをご紹介しました。働き方改革で労働環境が改善されることは、従業員満足度・企業力・離職率の改善などに大きな役割を担います。

生き方や働き方の多様化が推進される現代では、企業が積極的に働き方改革を行なっている事実自体が重要なケイパビリティとして認識されます。自社の社会的イメージや風土とも照らし合わせながら、オリジナルの施策を創造していきましょう。

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