プロセスマイニングは、日本ではまだ認知度の低い手法ですが、海外では「自動化の先をいき、業務の根本的な改善を行う」というスタイルが注目されています。
プロセスマイニングの海外事例が多いのはその為です。海外では既にプロセスマイニングが活躍しており、大きな業務コストの削減を成功している企業も多く存在します。
現段階でプロセスマイニングの導入を検討する多くの企業は、RPAなどの自動化ツールの導入経験があり、業務を改善することに意欲的なことが多いです。しかし、プロセスマイニングの導入は、ニューノーマルな生活様式に合わせて業務の改善を行っていきたい企業にも向いています。
今回は、はじめてプロセスマイニングを導入する企業でも導入後のイメージがしやすいように、どのような事例があるのか業種ごとに解説していきます。
この記事でプロセスマイニングが実際にどのように役に立っているのか、少しでも知っていただけたら嬉しいです。
プロセスマイニングに関する詳細はこちらの記事からご覧ください!
プロセスマイニングとは?5分でわかる徹底解説
製造業でのプロセスマイニング導入事例
プロセスマイニングの導入事例として最も多いのが製造業です。
製造業の業務は、効率化するとコストカットに繋がりやすい業務が多く結果としても現れやすいことから導入する企業が増えてきています。
それでは、実際の事例を見ていきましょう。
BMWの事例
BMWは、乗用車の販売や製造をメインの事業として行っている会社です。
公式サイト→https://www.bmw.co.jp/ja/index.html
BMWは、2016年にプロセスマイニングを導入しました。結果として、時間とコストの削減、業務プロセスの可視化、サービス品質の向上が達成されました。
BMWは「ドライブの楽しさと、素晴らしいドライブ体験のお客さまへの提供」を企業理念に掲げており、実現するためには世界トップクラスの業務プロセスが必要だと考えていました。
そのためにプロセスマイニングを導入して従業員ひとりひとりがプロセスマイニングで可視化されたデータをもとに、業務のプロセスを判断していくべきだと考えたのです。
導入にあたりまずはじめに2017年に塗装工場にプロセスマイニングを導入しました。
プロセスマイニングを使うこと自体がはじめてだったため、ツールの使い方、KPI設定の仕方などの運用に必要な基礎的な知識を身につけることからはじまります。
この現場で数週間後には成果が明確になったため、全社に展開していくことになります。
現在では40以上の業務で使用されており、約850人がデータの解析や業務改善に役立てています。
結果的には、コスト削減は勿論ですがユーザー対応、関税、商品品質の向上などの業務で成果がありました。
SIEMENSの事例
SIEMENSは、さまざまなジャンルでの製造を行っている世界最大級の製造会社です。電化製品から医療製品まで幅広く製造を行い、システム・ソリューション事業なども手掛けています。
SIEMENSはプロセスマイニングを導入し、社内自動化率を24%増やし、年間換算1000万回の手作業を削減しました。他にも年間150万点を超える商品の納期厳守に貢献しました。
世界最大級の製造会社としてSIEMENSはこれまでも、市場のリーダーとしての地位を確立するために積極的に新しい業務システムや手法を取り入れてきました。プロセスマイニングを導入したのも、業務を継続的に可視化・改善することでさらなるIT化の浸透と働き方を良いものにしていくためでした。
SIEMENSほどの大企業となると、業務プロセスがとても複雑で把握しずらいという問題が発生していました。2011年に当時には、監査プロセスを完全に可視化できる方法を探すこともを目的としてプロセスマイニングの試用を行い、そこで成功したため全社に展開していきます。現在では、世界で6,000人ものユーザーがプロセスマイニングを導入しています。
SIEMENSは結果として、営業部門での手戻り削減や社内自動化率24%の増加を達成しています。
ABBの事例
ABBは、電力関連や重工業をメインの事業とし、100カ国以上の国に進出している企業です。
ABBはプロセスマイニングの導入を行ったことで、購入から支払いまでのフローにいくつも重複があることを可視化することに成功しました。計画した業務と実際に行う業務とでは業務フローも異なってくるので可視化できた事は大きな成果だったと思います。
そもそもABBは、多くのテクノロジー製品を扱っているためより精度の高さが求められていました。特にプロセスの処理をいかに適切に行えるかが重要ポイントでした。具体的には、短納期、低コスト、高品質、後は在庫を少なくすることです。他にも世界100カ国以上でビジネスを行っていたので、業務プロセスも大規模なものとなり非常に複雑でした。ABBはこういった複雑な業務を可視化するためにもプロセスマイニングを導入しました。
最初は、購入と支払いのフローの分析を行いました。そこで成功し一気に全社展開へと広めていきます。現在ではABBは、社内すべての工場でプロセスマイニングを使用しています。ABB社は、プロセスマイニングを導入することですべての工場の進捗を確認することができるだけでなく他の会社とのベンチマークの可能性なども調べられると述べました。
結果的にABBではプロセスマイニングを導入して、本来目的としていた短納期、低コスト、高品質、低在庫の実現しました。
ボッシュの事例
ボッシュは1886年に設立された、自動車部品や電動工具などを扱っている世界的な大手企業です。約400,000人の従業員を抱え、世界60カ国以上でビジネスの展開をしています。
ボッシュは、さまざまな事業部門でプロセスマイニングを導入しています。その事例についてお話していきます。
ボッシュはプロセスマイニングの導入で、プロセス全体の非効率性の除去とそれに伴う手戻りの減少を達成しました。
さらに、業務全体の可視化をもとに自動化できる業務の特定まで可能になりました。
グローバルな企業であるボッシュには、さまざまな業務部門があります。
さまざまな部門がそれぞれ活躍していたため、多くの業務プロセスが存在していました。
グローバル事業を更に展開していくには、全ての業務プロセスに一貫性をもたせ、伝統的な紙でのやりとりを効率化していく必要がありました。
ボッシュは2017年から経理、物流、ITサービス、生産、販売などの部門で導入を開始します。
ビジネスプロセスの可視化と自動化を見据えた主導プロセス棚卸しを実現するために、社内のコンサルティング担当とIT部門関連するビジネス部門チームが導入を進めていきました。
メンバーの大半が社内の人間だったので、コミュニケーションが取りやすく、導入の際の問題は通常より少なかったといいます。
導入を進めていく中で、複数の事業運営によりイベントログデータが多い、プロセスが複雑で承認プロセスに無駄が発生しているなどの問題が見つかりました。
これらの問題がプロセスマイニングによる可視化で解消され、無駄な業務の削減と効率化の可能性を知ることが可能になりました。
結果的にボッシュは、プロセスマイニングの導入で社内の業務プロセスに一貫性がもたらされたことで、グローバル事業の拡大に成功しました。
バイエルの事例
バイエルは、医療用の薬品やヘルスケア商品の提供を行う会社です。日本の大阪に本社を構える日本の製薬会社で、国内のさまざまな地域にオフィスを構えています。
プロセスマイニングの導入後、バイエルは手作業で行っていた業務の自動化に効率化に成功しています。
バイエルの主な導入目的は「システムの安定性」でした。監査組織でプロセスマイニングの導入を行いますが、本来監査組織はプロセスマイニングのような技術を使用することはほとんどありません。
しかし、バイエルには他の監査組織と異なっていた点があり、それが理由でプロセスマイニングが目的達成に最も近いツールだということが判明し導入されました。
2012年にプロセスマイニングの導入を開始しますが、その当初の製品には現在のような能力はありませんでした。グローバルに運用されていたSAPシステムと向かい合うことで、業務の複雑さを解消したいという若手社員の想いがあり、2017年半ばには高度なシステムの安定性を達成し、新しい能力を獲得することに成功します。
他にも、手動発注でプロセスマイニングを導入し、もともとは自動で処理されていたにもかかわらず、その後手動で処理が行われていた注文を特定しました。
結果的にバイエルは、プロセスマイニングの導入でデジタルトランスフォーメーションの実現に成功しました。