『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』は変革プロジェクトの道標となる一冊|書評レビュー

Concept Framing:コンセプト固め

業務改革を始めるにあたって最初のフェーズが「コンセプト固め」になります。

変革プロジェクトの成否は立ち上げで9割決まるで事例を紹介したように、「コンセプト固め」のフェーズを後回しにして結局着手しないプロジェクトは意外とあるものです。

「コンセプト固め」のフェーズでは2つのことを行う必要があります。

  1. 同志を集めてチームを作ること
  2. 「どこを目指すか。なぜ目指すのか」を議論すること

1.同志を集めてチームを作る

まずは共に業務改革を行なっていく同志を集めてチームを編成します。いくつか人を集めるための方法が紹介されていますが、共通しているのは「様々な属性の人を集めるべき」という点です。

業務に数十年携わっているようなベテランの方や、これからの伸びしろが期待できる若手の方、自分とは馬が合わない方など、様々な人をコアメンバーに入れ込むと議論が弾みます。「現状を変えたいと思っている人」という前提条件を満たす人であれば、誰であってもコアメンバーとなり得ます。

2.「どこを目指すか。なぜ目指すのか」を議論する

次に、集めたメンバーで「どこを目指すか。なぜ目指すのか」について徹底的に議論します。

そもそも何が問題なのか。どういう組織にしたいのか。顧客に何を提供すべきなのか。様々な立場の社員が行きつ戻りつ議論していくことで、お互いのことや変革プロジェクトが本当に解決すべき課題や、解決するための作戦についての「仮説」が見えてくる。

引用:『業務改革の教科書(著:白川克、榊巻亮)』プロローグ 11ページ

議論の合間に、社長や役員といったトップのへのインタビューも取り入れると、全社方針から外れたようなコンセプトとなることを避けることができ、また味方に付けておくこともできるのです。

大企業となると役員へのアプローチはなかなか難しいものですが、直上の幹部社員を経由して、できれば本部長レベルの方と会話する場は設けるべきです。

たとえ決まらなくても最長4週間程度でこのフェーズは切り上げます。コアメンバーが集まって議論しても仮説すら見えない状況であれば、それ以上の議論は時間のロスになってしまうためです。次のAssessmentフェーズで現場、現物を見ることで課題を探る方針に転換していきます。

Assessment:現状調査・分析

「現状調査・分析」のフェーズでは次の2つのことを実行していきます。

  1. 現状調査
  2. 調査結果の分析と課題特定

1.現状調査

まず現状調査ですが、「業務とシステムの棚おろし」という作業を行なっていきます。

※棚おろし=調査対象の事柄に対して、5W1Hの観点「だれが・どこで・なにを・どのように・どのくらいの頻度で・なんのために行なっているのか?」について片っ端から書き出し、整理すること

棚おろしは非常に手間がかかりますが、後の現場ヒアリングやビジネスモデル策定など様々な工程で使いまわせる資料となりますので、手間を惜しまずに手間を惜しまずに作成することが大切です。

本書の中では調査フォーマットも紹介されていますので、それらを活用すると良いでしょう。調査フォーマットはできる限り変革プロジェクトメンバーで記入し、残りは現場へのヒアリングと並行して埋めていきます。

当たり前ですが、現場は常に忙しいのでヒアリングの仕方にも工夫が必要です。

現場の方々と良い関係を築くよう注意を払いつつ、短い時間で業務の現状、またなぜその業務が必要となっているのかという理由まで聞き出せるよう準備した上でヒアリングを行っていきます。

2.調査結果の分析と課題特定

次に分析ですが、調査の結果見えてきた課題の根拠を明確にし、実行すべき施策の理由となるような分析結果が望ましいです。

筆者が所属するチームで起こった実例をもとに、課題の根拠を設定するプロセスを見ていきましょう。

例えば、毎年年度末は業務が輻輳し残業増加による人件費コストの増大という問題があったとします。

この問題に対して、メンバー1人が担当する複数商談の納期が年度末に集中するために輻輳するため、「メンバーの負荷分散または商談納期の重複を減らす必要がある」という仮説課題を立てたとしましょう。

この際に、メンバーがいくつの商談を担当しているのか、納期はいつか、残業時間はどれくらいか、といった情報を定量的に示したグラフを用意して数字的根拠を示します。そのグラフに、「手が空いているメンバーへ作業を割り振る」「年度末納期が重複しないような商談の進め方、契約方法を検討する必要がある」のように示唆を加えます。

ただの定量分析結果だけを示しても「だから何?」となってしまうため、必ず示唆を加えましょう。しっかりとした分析結果と示唆が加えられた資料が出来上がれば、もう既に課題の特定まで完了しているはずです。

変革プロジェクトの範囲にもよりますが、通常1ヵ月~3ヵ月程度の時間が必要です。

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