【簡単に解説】生産性とは?見える化する計算式と8つの施策を紹介

あらゆる企業において、生産性向上は大きな課題のひとつです。デジタル化が進む昨今では、ユーザーのニーズやトレンドなども流動的に変化しています。フットワークの軽いビジネス展開を行なうためには、1人あたりの生産性を上げる必要があります。

生産性の向上は、企業が今の時代を生き抜くために必要な急務だといえるでしょう。今回は、生産性の意味や低下する原因、ビジネスにおいて生産性を向上させるアイデアなどをご紹介します。

生産性とは

ここでは、生産性の基本的な意味をご紹介します。一般的な生産性とは、新しい価値を創造する量や速度を表す言葉です。ビジネスにおいては労働量や産出量を交えながら生産性を産出することを踏まえ、改めて言葉の意味を理解していきましょう。

ビジネスにおける生産性の定義とは「労働時間に対する成果物の量」

ビジネスにおける生産性の定義とは、労働時間に対する成果物の量を指します。たとえば労働者1人や労働時間1時間などで表される「労働搬入量」を定義し、指定の労働搬入量1単位に対する成果物の産出量・産出額で生産性を測ります。

成果物の概要は事業内容や労働のプロセス・役割などによって異なり、純利益や制作量など部署やチームごとに定められるものです。ただし生産性は単純な額や量のみで測るとは限らず、製品やサービスの品質も指標に含んでいます。

ある企業が同じ時間枠内でより多くのサービス(製造や技術の活用を含む)を提供する場合、その企業の生産性は相対的に高いと見なされます。生産性の向上では、同じ資源や時間を使うことで、より多くの価値を創造することが求められるでしょう。

労働搬入量をひとつの単位する

上記で触れた「労働搬入量」について、さらに詳しく解説します。生産性の説明において、労働搬入量への理解は欠かせません。労働搬入量とは、ある作業を実行するために必要な人員の数や、作業を完了をするまでに必要な時間などの総量を指します。

同じ量や質の成果物を創造できた場合でも、労働搬入量が少なければ生産性が高く、多ければ生産性が低いといえます。労働搬入量を理解することで、作業プロセスの評価や改善、スケジュールの作成、人員の配分・教育などの決定に役立つでしょう。

たとえば工場のような製造業では、生産ラインにおける労働搬入量を減らすことで従業員の無駄な待ち時間を削減できるため、生産性が向上できます。労働搬入量の減少は人員をはじめとするコストカットだけではなく、作業プロセスの改善や設備の更新などでもかなえられます。

生産性の向上と業務効率化との違い

生産性の向上と類似する言葉が、業務効率化です。生産性の向上とは、同じ資源を利用してより多くの成果物を創造したり、サービスの質を向上させたりすることを指します。対して業務効率化は、同じ成果物を創造するために必要なコストや時間を削減することが目的です。

ただし生産性の向上において、コストカットの工程が含まれやすい傾向にあるため、結果として業務効率化につながる可能性があります。業務効率化では、同じ資源でより多くのタスクを実行できるようになります。企業の発展や成長では、生産性の向上と業務効率化がお互いに影響し、改善し合う形で進んでいくケースが多いでしょう。

生産性の主な3種類と算出方法

企業における生産性には、以下3つの種類が存在します。

  • 物理的労働生産性
  • 付加価値労働生産性
  • 全要素生産性

ここではそれぞれの生産性の意味や、算出するために必要になる計算式をご紹介します。企業の状態や数値と当てはめながら、現状を定量的に理解した上でビジョンを組み立てていきましょう。

1.物理的労働生産性

物理的労働生産性とは、成果物の個数や大きさなどの物理的な量を産出量としたときの生産性を指します。特に製造業やものづくり産業で業務効率を測る際に用いられやすく、労働人員や業務プロセス、設備などの改善における指針になります。

物理的労働生産性を算出する計算式は「生産物の物量÷労働量」です。労働量は労働人数や労働時間として当てはめられるケースが多く、1日あたりの生産量・1人1時間あたりの生産量などを算出できます。

2.付加価値労働生産性

付加価値労働生産性は、成果物の金銭的な価値を算出量としたときの生産性です。たとえば同じような成果物を作った場合でも、原材料の価格や製造プロセスによって付加価値労働生産性は上下します。

付加価値労働生産性は、製造の過程で付加価値を生み出すために使用された労働時間・労働投入量と比較することで測定するため「生み出した成果物の販売額(売上高)-外部から購入した費用」で算出されます。

3.全要素生産性

全要素生産性とは、労働人数や資本の量などすべてのコストに対して得られた成果物の割合です。資本の中には、労働力・技術・土地・設備・光熱費・雑費などあらゆる要素が含まれています。しかし実際には、資本のすべてを数値化することは難しいです。

そのため全要素生産性を算出するためには「全体の生産量の変化率-労働や資本の変化率」の計算式が必要になります。もしくは「出力÷全要素投入率」でも算出が可能です。後者の場合、出力とは「製品・サービスの生産量や売上高などの指標」です。

生産性が重要な理由とは|持続と発展のために必要

ここでは、ビジネスにおいて生産性が重要な理由についてご紹介します。生産性の向上はすべての企業にとって永遠の課題であり、常に改善を意識し続ける必要があります。長期的に持続可能なビジネスを展開するために、生産性の重要性を改めて学びましょう。

ビジネスにおいて生産性が重要な理由

ビジネスにおいて生産性が重要な理由は、以下に挙げるさまざまな課題を実現するためです。

  • コスト削減
  • 商品・サービスの品質向上
  • 新規ビジネスの創出
  • 競争力の維持
  • ビジネスの長期的な持続可能性

生産性の向上では、同じ品質の製品やサービスをより少ないコストで生み出すことが可能になります。余剰の資源を活用することで品質を上げられるため顧客満足度の向上につながり、企業の新たな可能性を創造できるでしょう。

効率的な資源の活用は競合他社との競争に勝つための力になり、長期的な事業の維持にも役立ちます。

日本において生産性が重要な理由

世界中の企業にとって生産性向上は重要な課題です。中でも日本の労働生産性は先進国の中でも最低ランクであるため、改善が急務といわれています。日本における労働生産性の低下の原因はさまざまですが、中でも人口減少による労働力不足は深刻な問題です。

将来的には現在よりもさらに労働力が不足することが懸念されるため、少ない労働力でもより多くの製品やサービスを創造するプロセスが求められています。

また高い生産性は経済成長にとっても不可欠な要素です。日本が経済的な成長を遂げるためには、生産性の向上は必須といえるでしょう。

生産性が低下する原因

ここでは、生産性が低下する原因をご紹介します。ビジネス全般における原因と日本に限定した原因をそれぞれ解説していきますので、自社の状態と照らし合わせながら改善策につなげていきましょう。

ビジネスにおいて生産性が低下する3つの原因

まずはビジネスにおいて生産性が低下する原因を3つご紹介します。生産性の低下は労働者の状態と密接に関係しています。数値だけでは認識できない要素にも着目し、原因を判別していきましょう。

1.長時間労働

長時間労働では、疲労によるヒューマンエラーの発生や集中力・モチベーションの低下などにより、生産性が下がる傾向にあります。労働時間が長引くほど従業員は早く業務を終わらせようとする焦りから、ミスやロスが発生する可能性も高まります。

また長時間労働はストレスの原因にもなり、企業やチームへの帰属意識が低下するためやる気が下がり、パフォーマンス自体も下がってしまうでしょう。業務改善のための時間・体力の余裕がなくなり、生産性の低下につながります。

2.マルチタスク

ビジネスにおけるマルチタスクは、生産性低下の原因になります。マルチタスクは同時に複数のタスクを行なうことであるため、一見すると生産性を向上させる印象を受けるかもしれません。

しかし、基本的に人間の脳は複数のタスクを同時に処理できないものです。着手するタスクが変わるごとに脳内を切り替えねばならず、効率的な処理が困難になります。さらにタスクの同時処理はストレスの原因にもなり、パフォーマンスを低下させてしまうのです。

3.労働環境がアナログ

アナログな労働環境は、生産性の低下につながります。たとえば顧客の情報を手書きで管理している場合、手作業によるミスやエラーが増加するため作業時間の延長や再確認の工程が必要になるでしょう。

さらにデジタル化されていないデータは部署間での情報共有が困難であり、コピーや訪問のアポイントメントなどの無駄なコストが発生します。また作業にかかった時間や作業量などを定量化することが難しいため、生産性を正確に測定しにくい点も挙げられます。

日本において生産性が低下する2つの原因

日本の生産性の低下には特有の原因があるものです。ここでは、日本で生産性が低下する原因をご紹介します。他国の状態や生産性の数値と比べながら、現状改善のための施策を打ち出していきましょう。

1.労働力不足

日本は人口の急激な減少について、警鐘を鳴らしています。総務省によると、日本の人口は2024年をピークに約100年かけて100年前の水準に戻っていくと考えられています。その結果、深刻な労働力不足が懸念されるでしょう。

2022年度の出生数は80万人を下回り、第一次ベビーブーム期の250万人を大幅に下回りました。政府は出生数回復を意図する数々の施策を打ち出していますが、現状において生産性を回復するためには、事業内容や労働プロセスの改善が急務といえるでしょう。

参考:総務省「市町村合併の推進状況について」

2.働き方改革が不完全

2019年に本格的に施行された働き方改革ですが、企業によっては変革が不十分な場合があります。働き方改革では長時間労働の是正や柔軟な働き方の実現が提唱されており、労働環境の変化が不十分な状態では生産性の向上が滞ってしまうでしょう。

たとえばドイツの労働環境では、経営者が残業を強要した場合は罰金や禁錮刑などの厳しい罰則が科せられます。他国の法律を完全に模倣する必要はありませんが、生産性向上のためには大幅な変革における施策が求められるでしょう。

<入稿メモ:「働き方改革とは」の記事リンクを挿入>

ビジネスの生産性を向上させる8つの施策

ここでは、ビジネスの生産性を向上させるために必要な施策を8つご紹介します。あらゆる企業や業態に共通するヒントを解説していきますので、まずは無理なく取り入れられるものから導入していきましょう。

数値上の生産性向上には、従業員の精神性やモチベーションも大きく影響することを認識することが大切です。

1.生産性を測定し、課題を分析する

生産性を向上させるためには、まず課題を定量的に可視化する必要があります。自社の生産性を物理的労働生産性・付加価値労働生産性・全要素生産性の3つに分類し、数値として算出した上で具体的な課題に落とし込んでいきましょう。

2.社員の業務を可視化し、整理する

社員の業務を可視化することで、生産性向上のための課題を発見しやすくなります。タスクをすべて書き出してムダ・ムリ・ムラを洗い出し、業務プロセスの改善に役立てましょう。特にアナログで行なっている作業の把握は、デジタル化に移行するためのヒントとして活用できます。

3.業務内容をマニュアル化する

業務内容のマニュアル化は、生産性向上をサポートしてくれます。作業における一定のプロセスが確立されるため、誰が行なっても同じような質を担保できるでしょう。新しく入社した従業員でも生産性の高い業務をこなしやすくなり、ヒューマンエラーの減少も期待できます。

<入稿メモ:「マニュアル作成ツール」の記事リンクを挿入>

4.従業員のモチベーションを維持する

生産性向上のためには、従業員の愛社精神や帰属意識を高めることも重要です。評価制度を見直したり従業員に寄り添った労働環境を提供したりなどの方法で、1人ひとりの業務に対するモチベーションをアップさせましょう。無駄をカットした業務効率化も、モチベーションの維持に役立つ場合があります。

5.社員のスキルアップをサポートする

社員のスキルアップによって知識や技能の幅が広がると、生産性の向上につながります。従来と比べて業務を効率的にこなせるようになり、従業員自身で業務プロセスの改善に着手することも可能です。

スキルアップによって従業員が新しいサービスやアイデアを創出できれば、さらに高い付加価値を持つ商品を生み出せるでしょう。資格取得やセミナー参加を後押しするために、福利厚生や制度を見直すこともひとつの手段です。

6.社員間で信頼関係を構築する

生産性向上のためには、社員間で信頼関係を構築することが大切です。お互いに協力し合える関係性が築けていると、疑問やトラブルを1人で抱え込みにくくなるため、業務を滞りなく進められるでしょう。

コミュニケーションが円滑なチームでは、率直な意見交換も容易になります。多様な意見が生まれることで業務改善やイノベーションのきっかけになり、生産性向上にもつながっていきます。

7.ITツールを積極的に活用する

ITツールを積極的に活用することは、生産性向上のために重要な工程です。ITツールによる作業の自動化は労働時間の短縮や労働人員の削減に役立ち、生産性向上につながります。

ツールの活用はアナログ作業よりもマニュアルが共有しやすい傾向にあるため、成果物の質の均等化にも役立つでしょう。

8.適材適所に社員を配置する

生産性を向上させるためには、社員の特性やスキルを考慮した上で適材適所に配置することが求められます。作業の効率が上がるだけではなく、従業員の仕事に対するモチベーションも高まり生産性向上につながります。

自分に適した仕事を担当すれば、業務に対する理解が深まりやすくなるでしょう。従来よりも高い成果を生み出すことでやりがいが生まれ、1人ひとりが企業に貢献しやすい環境が構築されます。

生産性の向上はビジネスの存続と発展の鍵!

今回は、生産性の意味や種類、ビジネスにおける生産性を向上させるヒントなどをご紹介しました。

生産性の確保は、競争優位性の確保にもつながります。同じ資産を用いて多くの成果を残すことで、売上が伴い新規事業展開の余裕も生まれるでしょう。

生産性の改善には、現状の課題を洗い出すことが先決です。まずは定量的なビジョンを抱えた上で、従業員が抱えているタスクや業務プロセスを明文化することから始めましょう。

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